雨後のキノコの電気的な会話を測定 菌糸のネットワークによるシグナル伝達の可能性を野外で初確認
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 助教 深澤遊
【発表のポイント】
・地上に生えているキノコに電極を設置し、野外での電位変化の測定に初めて成功しました。
・雨が降るとキノコの電位が変化することがわかりました。
・野外のキノコ間で方向性のある電気シグナル伝達が起こっている可能性が示唆されました。
・野外の菌類におけるシグナル伝達の理解は、森林における菌類の生態学的な役割の理解や制御に役立つと考えられます。
【概要】
菌根菌(注1)は土壌中に菌糸のネットワークを張り巡らせ、植物の根と共生関係を築くことで森林生態系の維持に重要な役割を果たしています。菌根菌の菌糸を介した植物間のシグナル伝達は世間の注目を集めていますが、科学的なデータは多くありません。
東北大学農学研究科の深澤遊助教と長岡工業高等専門学校の武樋孝幸講師、同校の赤井大介本科生、京都大学白眉センターの潮雅之特定准教授(現 香港科技大学助理教授)の研究グループは、森林の地上から発生した外生菌根菌オオキツネタケのキノコ(子実体)に電極を設置し、雨の後にキノコの電気的な活性が変化しそれが維持されることを野外で初めて測定することに成功しました。キノコ間での電位の変動パターンに有意な因果関係が確認されたことから、キノコ間で電気シグナル伝達が起こっている可能性があることが示唆されました。菌根菌を介した植物個体間のシグナル伝達の研究に寄与する成果です。
本研究成果は2023年3月14日(火)に菌類生態学の国際誌Fungal Ecologyのオンライン版で公開されました。
図1 オオキツネタケのキノコに設置された電極
【用語解説】
注1 菌根菌
植物の根に菌糸を侵入させ、菌根と呼ばれる共生体をつくる。菌根菌は土壌中から水や養分を集めて植物に供給し、植物は光合成産物である糖を菌根菌に提供する相利共生関係にあることが多い。
雨後のキノコの電気的な会話を測定 菌糸のネットワークによるシグナル伝達の可能性を野外で初確認
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) March 24, 2023
大学院農学研究科森林生態学分野 深澤遊助教による共同研究成果は2023年3月14日(火)に菌類生態学の国際誌Fungal Ecologyのオンライン版で公開されました。https://t.co/p86jHIFaxJ pic.twitter.com/Zj6sW7yJkb
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