菌類の最適採餌戦略 エサの量と距離に応じた菌糸体の行動のちがい

【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 助教 深澤遊
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】
・培養実験で菌類の菌糸体のエサのサイズと距離に対する行動を調べました。
・菌糸体は近くて大きいエサには引越しやすいのに対し、遠くて小さいエサにはなかなか引越さないことがわかりました。
・菌類の菌糸体は動物と同様にエネルギー収支に基づいて資源探索行動をとっている可能性があります。

【概要】
キノコやカビなどの菌類は「菌糸」と呼ばれる糸状の体を伸ばして成長していきますが、その動きに記憶力や決断力が見つかるなど、知的な「行動」をとることが近年わかってきました。しかし、菌類が周囲の環境をどのようにとらえて行動しているのかはよくわかっていません。
東北大学大学院農学研究科の深澤遊助教と農学部4年生(当時)の石井香帆さんは、木材をエサとする木材腐朽菌の菌糸を培地上で培養し、エサとして与える木片の大きさや距離を変えた実験を行うことで、菌糸体の行動がどう変わるか調べました。その結果、菌糸体は近くて大きいエサには引越しやすいのに対し、遠くて小さいエサにはなかなか引越さないことがわかりました。エサの大きさは得られるエネルギー量に、エサまでの距離はエサの探索に必要なエネルギーコストにそれぞれ関わってくると考えられます。
この結果は、菌類の菌糸体が動物で知られる「最適採餌戦略」のようにエネルギー収支に基づいて資源探索行動をとっていることを示唆しています。広く生物に共通する行動原理の探究や、野外の菌糸体の行動予測などを通じて、森林生態系における菌類の重要性の理解につながる研究成果です。
本研究成果は2023年8月24日(木)に国際科学誌Frontiers in Cell and Developmental Biologyで公開されました。


図1 近いエサ(左)と遠いエサ(右)に定着したチャカワタケの菌糸体

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