植物が無機窒素を有機窒素へ変換するしくみ ―植物の根は窒素同化を調整するー

農学研究科植物細胞生化学分野小島創一助教、植物栄養学分野石山敬貴助教の研究成果が、日本時間2023年2月20日午後1時にスイスの科学雑誌「Frontiers in Plant Science」に掲載されました。

【発表のポイント】
●植物の根に窒素肥料を与えると、アンモニウムをアミノ酸に変換する遺伝子が発現します。
●植物の根が「アンモニウムに応答」して遺伝子を発現させるために必要なDNAの配列とその配列に結合するタンパク質を見つけました。
●窒素肥料を有機化する遺伝子の発現をまとめて調節することで、少ない窒素肥料を有効に活用する植物の開発に結びつくことが期待されます。

【概要】
植物が健康に育つためには窒素が必須です。植物は根からアンモニウムなどの無機窒素を吸収しています。アンモニウムは根で有機態のグルタミンやグルタミン酸へ同化され、その他の必須アミノ酸が合成されます。植物のグルタミンとグルタミン酸を合成する酵素の遺伝子は、根のアンモニウム濃度が高くなったときに発現量が増えます。しかし植物の根がアンモニウム濃度に応じて遺伝子発現を調節する機構は不明でした。

東北大学大学院農学研究科の小島創一助教と石山敬貴助教は、理化学研究所、ミシガン州立大学との共同研究により、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質を用いて、グルタミンとグルタミン酸を合成する酵素の遺伝子がアンモニウムに応答する様子を可視化し、アンモニウムの応答性に必要な遺伝子領域を特定しました。さらに、アンモニウム応答に必要な遺伝子領域に結合する転写因子を酵母ワンハイブリッド法と呼ばれる方法で特定しました。今後の研究によって、植物のアンモニウム応答性の理解がさらに進み、アンモニウム同化遺伝子の発現をまとめて調節することで、少ない窒素肥料でも健康に育つ植物の開発が期待されます。

・研究成果ウェブサイト
https://web.tohoku.ac.jp/research/
・プレスリリース 
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230302-02-nitrogen.html

 

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