赤潮原因プランクトンの天敵を発見! ―寄生生物を用いた赤潮プランクトン防除に期待―
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 准教授 西谷豪
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【発表のポイント】
赤潮原因プランクトンであるカレニア・ミキモトイ(注1)は、主に東アジアの沿岸域において頻繁に赤潮(注2)を形成し、1件の赤潮で被害金額が十億円を超える規模の魚介類の大量死を引き起こすことがあります。
この赤潮プランクトンに寄生して殺藻する寄生生物を世界で初めて発見し、それが寄生性渦鞭毛藻(注3)の一種であることを明らかにしました。
この寄生生物の単離・培養に成功するとともに、室内培養実験により、それがカレニア・ミキモトイのみに高い殺藻効果を持つことを確認しました。
さらに研究を進めることで、赤潮の発生・終息の予測、あるいは寄生生物を「天敵製剤」として利用する赤潮プランクトン防除法の開発への応用が期待されます。
【概要】
カレニア・ミキモトイは、アジア圏の沿岸を中心に世界中の海域で赤潮の原因となるプランクトンで、日本沿岸の過去30年間における本種による漁業被害金額の総額は、90億円にものぼると報告されています。
東北大学大学院農学研究科の西谷豪准教授らの研究グループは、赤潮プランクトンに高い寄生性を有する新規の寄生性渦鞭毛藻(Amoebophrya sp.)を大阪湾から世界で初めて発見し、その単離・培養に成功しました。さらに、この寄生生物は、珪藻などの無害なプランクトンには寄生しない(安全性が高い)ことを示しました。
今後、寄生が起こりやすい環境条件を解明することで、その年の赤潮発生の規模や収束時期の予測に繋がる可能性があります。将来的には、この寄生生物を「天敵製剤」として利用することによって、全国で発生する赤潮プランクトン防除法の開発への応用が期待されます。
本研究の成果は、2025年12月9日に国際誌Communications biologyで公開されました。
図1. 寄生生物が赤潮プランクトンに寄生する様子
まず、寄生生物が赤潮プランクトンの細胞内に侵入します(左上)。その後、赤潮プランクトンの栄養を吸収しながら、寄生生物が300ほどに増殖します(右上)。寄生の終期には、寄生生物が赤潮プランクトンの細胞を突き破り、外に出てきます(右下)。そして新たな赤潮プランクトンへと寄生していきます(左下)。この一連のサイクルが、3-4日で完結します。
【用語解説】
注1. カレニア・ミキモトイ:主に日本、中国、韓国沿岸において赤潮の原因となるプランクトン。渦鞭毛藻類(縦横2本の鞭毛を使って遊泳する植物プランクトン)の一種で、大きさは30〜40μm。日本では主に春から夏のあいだ(海域によって秋や冬の発生もあり)、西日本を中心に本種による赤潮で漁業被害が発生します。
注2. 赤潮:赤潮とは、海水中の渦鞭毛藻やラフィド藻と呼ばれる微細藻類が1 mLの海水中で数千から数万細胞に異常発生することで、水の色が変化する現象を指します。
注3. 渦鞭毛藻:植物プランクトンの中で、最も種数が多いグループ。約2000種が知られ、淡水から海水まで広く分布します。この仲間は基本的に単細胞で、2本の鞭毛をもち、「うず」を巻くように細胞を回転させながら泳ぎます。植物プランクトンの中でも、最も有害有毒種を含むグループとしても知られています。
【論文情報】
雑誌名:Communications biology
論文タイトル:Biological control potential of red-tide marine dinoflagellate blooms by an Amoebophrya parasitic killer
著者:国立大学法人東北大学大学院農学研究科 西谷豪 准教授(筆頭著者)、大越和加 教授、緑川祥太朗 大学院生
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所 山本圭吾 総括研究員、中嶋昌紀 総括研究員(理事)
国立研究開発法人水産研究・教育機構 中山奈津子 有害・有毒藻類グループ長、山口峰生 フェロー
地方独立行政法人北海道立総合研究機構 函館水産試験場 夏池真史 主査
DOI:10.1038/s42003-025-09141-1
赤潮原因プランクトンの天敵を発見! ―寄生生物を用いた赤潮プランクトン防除に期待―大学院農学研究科西谷豪准教授の研究成果は、2025年12月9日に国際誌Communications biologyで公開されました。https://t.co/rPdXwxcaXe pic.twitter.com/pcDj4NLOaC
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) January 16, 2026
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