屋久島のミニチュア植物群の進化はシカの採食圧が原因だった! 80種にわたる植物の大規模な収れん進化の解明

【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 特任助教 髙橋 大樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】
・世界自然遺産・屋久島では、植物が極端に小型化する法則が知られていましたが、その進化要因がシカの採食圧であることを解明しました。
・小形化の法則は草食動物であるシカが好んで食べる種にのみ当てはまっており、ミニチュア植物の進化は、シカの採食圧から逃れるためだったことを示唆しています。
・80種にも及ぶ植物群が草食動物の影響で一斉に小型化した可能性を世界で初めて明らかにした研究成果です。

【概要】
屋久島には、茎や葉の長さが5cmに満たないミニチュア植物が80種以上分布しています。島外では普通の大きさの種が、屋久島でのみ極端に小さくなっているという法則は、植物進化学において奇妙な現象として知られてきました。屋久島で植物がミニチュア化した進化要因として、土壌貧栄養説、低温説、日照不足説などが唱えられてきましたが、これまでその主たる要因は明らかになっていませんでした。

東北大学農学研究科の髙橋大樹特任助教、陶山佳久教授、京都大学の阪口翔太助教、瀬戸口浩彰教授、福島大学の福島慶太郎准教授の研究チームは、40種の屋久島産植物とその比較種となる島外の植物のサイズを測定し、植物の体サイズに関係する要因を解析しました。その結果、気象条件や土壌栄養分ではなく、草食動物であるシカが好んで食べる種であるかどうかが植物の小型化と関係していることが明らかになりました。シカは極端に背の低い植物を食べにくいことが知られており、屋久島のミニチュア植物はヤクシカの採食圧から逃れるために進化したと考えられます。本研究成果は、80種にも及ぶ大規模な植物のミニチュア進化が草食動物の採食圧によってもたらされたことを世界で初めて示唆するものです。

本研究成果は、植物生態学の専門誌Journal of Ecology で5月9日に発表されました。


図1. A; 屋久島永田岳(標高1886m)、B; 屋久島花之江河湿原(標高1640m)、 C & D; 屋久島のミニチュア植物(C; キク科アキノキリンソウ属イッスンキンカ、D; セリ科シシウド属ヒナボウフウ)、E; 屋久島でミニチュア化していない不嗜好性植物(キク科アザミ属ヤクシマアザミ)、F & G; 霧島山系韓国岳の普通タイプ植物(F; キク科アキノキリンソウ属アキノキリンソウ、G; セリ科シシウド属ツクシゼリ)、H; ヤクシカ

詳細(プレスリリース本文)

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