トマトの花粉稔性を回復させる新たな遺伝子を発見 ―ミトコンドリア DNA 複製に関わる遺伝子が鍵―

【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 特任助教 桑原康介
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】
・一代雑種の種子生産に用いられる細胞質雄性不稔性トマトにおいて、花粉稔性(注1)を回復させる新たな核遺伝子を同定しました。
・ミトコンドリアDNAの複製に関わるDNA polymerase I またはTopoisomerase I のいずれか一方の機能欠損が、花粉稔性の回復を誘導することを明らかにしました。
・本成果は、トマトにおける効率的な一代雑種の種子生産につながることが期待されます。

【概要】
細胞質雄性不稔性(CMS)(注2)は、ミトコンドリア遺伝子の異常によって花粉が形成・機能しなくなる植物の性質です。CMS は、収量性の高い一代雑種(F1 品種)(注3)の種子を作るために、様々な作物で利用されてきました。一方、 F1 品種の種子生産には、花粉稔性を回復させる核遺伝子(稔性回復遺伝子)も不可欠ですが、トマトにおいてはその遺伝子の同定例が限られていました。
東北大学大学院農学研究科の桑原康介特任助教らの研究グループは、筑波大学、かずさDNA 研究所と共同で、ミトコンドリアDNA 複製に関わる遺伝子であるDNA polymerase I およびTopoisomerase I の機能が失われることで、CMS トマトの花粉稔性が回復することを明らかにしました。本成果は稔性回復の新しい分子メカニズムを提示するとともに、トマトにおけるF1 種子生産のさらなる効率化につながることが期待されます。

本成果は2025年12月19日にPlant Physiology and Biochemistryに掲載されました。



図1. CMS 系統と稔性回復系統を利用したトマトF1 種子生産の概要
CMS 系統では、CMS 原因遺伝子の作用によって花粉が形成・機能しなくなり、果実が実りません。一方で、稔性回復を誘導する突然変異を持つ稔性回復系統を交配すると、CMS 原因遺伝子の作用が抑えられ、花粉が形成され果実が実るようになります。

【用語解説】
注1. 花粉が正常に形成され、受粉後に発芽して果実をつける能力のこと。
注2. 細胞質雄性不稔性:ミトコンドリアゲノムに存在する遺伝子が、花粉の形成や機能を阻害する現象。
注3. F1品種:種子親(母親)と花粉親(父親)の固定された組み合わせで作り出される品種。

【論文情報】
タイトル:Fertility restoration in cytoplasmic male sterile tomato via knockout of either DNA polymerase I or Topoisomerase I, two nuclear-encoded organellar DNA replication genes
著者: Kosuke Kuwabara⁎, Van Bosstraeten Alexis Gaetan, Rika Nakajima, Kentaro Ezura, Kinya Toriyama, Kenta Shirasawa, Tohru Ariizumi
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 特任助教 桑原康介
掲載誌:Plant Physiology and Biochemistry
DOI: 10.1016/j.plaphy.2025.110970

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