嫌気性環境から新たな脂質分解酵素を発見 ―バイオガス生産効率向上と産業応用に期待―
【本学研究者情報】
〇農学研究科 准教授 多田千佳
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【発表のポイント】
・嫌気性環境から、分解微生物の生産する新規脂質分解酵素(リパーゼ)を発見しました。
・このリパーゼを生産する脂質分解微生物の新種を特定しました。
・新規リパーゼは超高温耐性(約97.5℃)、アルカリ(pH 11)条件で活性を持つユニークな特性です。
【概要】
脂質を多く含む廃棄物はエネルギー源として高いポテンシャルをもちます。しかし、微生物によるエネルギー変換であるメタン発酵の際に、反応を担う微生物の活動を阻害することが課題でした。
東北大学大学院農学研究科の多田千佳准教授らは、嫌気性消化槽(注1)から、極めて高温・高アルカリ条件でも活性を示す新規リパーゼ(脂質分解酵素)を発見するとともに、その酵素を生産する微生物を特定しました。培養に依存しない手法である機能メタプロテオミクス(注2)・メタゲノミクス(注3)を用いることで、これまで同定が困難だった脂質分解微生物を特定しました。
発見された新規リパーゼは、最適温度が約97.5℃、最適pHが11という、既知のリパーゼにはほとんど例のない特性を示しました。また、メタゲノミクスから再構築された微生物叢のゲノム情報から、この酵素は、これまで既知に報告されたCandidatus Scatomorpha属とは異なるCandidatus 同属の細菌種が作ること、さらに、この微生物は、脂質を分解して得られるグリセロールの資化(注4)に関わる遺伝子群を有することがわかりました。Candidatus Scatomorpha属の細菌は、脂質を多く含む食品廃棄物やチーズホエーなどを処理する嫌気性消化槽に優占することが過去に確認されていますが、その具体的な機能性は不明でした。私たちの本研究は、Candidatus Scatomorpha属の細菌が脂質代謝能を有することをタンパク質およびゲノムの両方からとらえ、嫌気性消化槽の脂質代謝における重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
本成果は、脂質含有バイオマスからのメタン生産の効率向上に貢献するだけでなく、高温・高pH条件下で使用可能な新規リパーゼとして、産業プロセスへの応用も期待されます。
本成果は、2025年12月24日に国際学術誌 Applied Microbiology and Biotechnology に掲載されました。
【用語解説】
注1. 嫌気性消化槽:いわゆるメタン発酵リアクターのこと。嫌気性微生物による発酵によって、バイオガスのメタン生産を行う反応槽のこと。
注2. メタゲノミクス:環境や生体試料中に存在する微生物群集のDNAをまとめて解析する手法のこと。
注3. メタプロテオミクス:環境中や生体試料中に存在する微生物群集全体が実際に発現しているタンパク質を網羅的に解析する手法のこと。
注4. 資化:微生物がその物質を利用すること。
【論文情報】
タイトル:Culture-independent discovery of a novel thermotolerant lipase and its producer from mesophilic anaerobic digestion sludge
著者:櫻井莉久、福田康弘、多田千佳*
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 准教授 多田千佳
掲載誌:Applied Microbiology and Biotechnology, Volume 109, article number 283, 24, December, 2025
DOI:10.1007/s00253-025-13674-0
嫌気性環境から新たな脂質分解酵素を発見
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) January 28, 2026
―バイオガス生産効率向上と産業応用に期待―
大学院農学研究科 多田千佳 准教授らの研究成果は、2025年12月24日に国際学術誌 Applied Microbiology and Biotechnology に掲載されました。https://t.co/fxMW2dCDP6 pic.twitter.com/1IeNlfQ8gw
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