研究概要

動物生理科学分野は、反芻動物の生理学に関する教育・研究を開設当初から行っている。ウシ、ヒツジ、ヤギなどの反芻動物は、前胃内の微生物との共生関係を確立しており、植物の嫌気的発酵により生産される短鎖脂肪酸を主要なエネルギー源としている。当分野は、肉とミルクなどの良質の食糧を生産する反芻動物の消化・代謝・内分泌などの諸機能の特徴を精査し、その生物学的意義を解明するための幅広い研究を体系的に行っている。現在は、1) 離乳期における消化器系および内分泌機能の変化、2) 反芻動物の代謝・内分泌ネットワーク調節因子の探索、3) 反芻家畜のルーメン内の恒常性維持、4) 体脂肪蓄積と脂肪酸の認識機構と作用機構、5)泌乳と乳腺組織の機能、などに関する研究を行っている。

講座の歴史

初代教授 梅津元昌

昭和23年6月、初代教授である梅津元昌博士が旧満州から帰国し、同年9月、家畜生理学講座の設置が認可された。翌24年末に東大から津田恒之助手が着任し、藤田潯吉講師、勝野正則助手、南小柿純子(現津田)、須藤順子(現小高)両技官を加えて、講座としての体制が確立した。翌25年には、大森昭一朗氏(元農水省)が助手となった。 梅津教授は、反芻動物の消化・栄養の生理学を研究の中心課題とし、以来、この思想の流れは現在も続いている。昭和36年、梅津教授は日本農学賞を受賞した。この間、柴田章夫(現日大農獣医)、木村和彦(元尚絅女大)、安保佳一(元岩手大農)、橋本智子(現安保・元修紅短大)、板橋安子(元競走馬理化研)、大平速雄(自営)、渡辺泰邦(現信州大)、佐々木康之、大友泰、永井モト子(現西村)、畠山愛子(現関口)、村松道子(元宮城総合衛生学院)、梅津晰子(現瀬戸)の諸氏が助手、技官または秘書として講座の活動を推進した。昭和40年、梅津教授は停年退官し、日本獣医畜産大学学長となった。退官記念として「乳牛の科学」(養賢堂)を出版した。

第二代教授 津田恒之

昭和42年8月、津田助教授が教授に昇任、翌春、安保助手が助教授に、また東北農試から佐々木康之氏が助手として着任し、村松助手、庄司芳男、大友泰両技官、山路瑞子秘書(現三浦)を加えた体制で新しい家畜生理学講座が発足した。昭和49年、村松助手の山形大(医)転出、山路氏の退職の後、庄司氏が助手となり、秘書は鈴木緑(現菊池)、玉手敦子、次いで森川(現佐々木)由美子氏に変り、講座の活動を推進した。 津田教授は、環境調節代謝測定室(35年建設)を用いた暑熱・寒冷暴露条件下における反芻動物の生体反応、糖・脂質代謝、交感神経ー副腎髄・皮質系や膵などの内分泌機能の動態等々の研究を鋭意進めた。この間、昭和57年4月に安保助教授が岩手大学農学部の教授に昇任、佐々木助手が助教授に、山形大(医)から加藤和雄氏が助手として着任した。昭和62年に津田教授は停年退官し、東京農業大学の教授となった。退官記念として、「新・乳牛の科学」(農文協)を出版した。津田教授は、昭和35年に日本畜産学会賞、同61年に日本農学賞、同63年に紫綬褒章を受賞した。更に、平成元年に仙台市で開催された「第7回国際反芻動物生理学シンポジウム」の組織委員会委員長を務める等、学際的に活躍した功労により、平成6年に勲二等旭日重光賞を受章した。

第三代教授 佐々木康之

昭和62年8月、佐々木助教授が教授に昇任し、梅津教授以来の「反芻動物生理学」の視点をさらに拡大・発展して、反芻動物における採食や種々の栄養素の内分泌調節機能における生物学的意義に関する研究を鋭意進めてきた。教授は、昭和46年に日本畜産学会賞を受賞した。この間、講座名を「家畜生理学講座」から「動物生理科学講座」に変更した。また、平成2年12月に加藤助手が助教授に昇任、小田伸一氏(現岩手大農)が助手となり、庄司助手(平成7年退職)、大友技官、森川秘書(平成5年退職)を加えた新体制となった。さらに、平成6年8月に小田助手は岩手大農の助教授に昇任し、翌7年4月に萩野顕彦氏(奥羽大学)が助手として赴任した。 平成10年3月に佐々木教授が定年退官し、東北生活文化大学副学長となった。退官記念事業として、「反芻動物の栄養生理学」(農文協)を出版した。

第四代教授 小原嘉昭

平成10年4月、小原嘉昭教授が農水省畜産試験場より赴任し、加藤助教授、萩野助手、大友技官、佐藤秘書の新体制になった。また、同月より大学院講座に移行し、講座名が「東北大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 生命機能科学講座 動物生理科学分野」となった。所属専攻が「応用生命科学」から「資源生物科学」に再編成され、現在に至っている。また、日下恒子氏が2002年4月から秘書を務めている。 小原教授は、主として仔ウシの発育に伴う消化、代謝、内分泌機能の獲得について研究を行った。 平成18年3月に小原嘉昭教授が定年退職し、明治飼糧株式会社の研究顧問に着任し、同年4月に日本農学賞を受賞し、9月に「ルミノロジーの基礎と応用」(農文協)を出版した。

第五代教授 加藤和雄

平成19年4月、加藤和雄教授が教授に昇任し、萩野顕彦助手(助教)、日下恒子秘書の新体制になった。平成21年4月、盧尚建准教授が信州大学から着任した。 平成27年3月に加藤和雄教授が定年退職し、家畜機能生産開発寄付講座の客員教授になりました。4月には新編家畜生理学(養賢堂)を出版した。

第六代教授 寺田文典

平成28年4月、寺田文典教授が明治飼糧より赴任し、盧尚建准教授、萩野助教の新体制になった。令和2年3月に寺田文典教授は定年退職した。

第七代教授 盧尚建

令和3年(2021年)4月、盧尚建准教授が教授に昇任し、萩野顕彦助教、李權正助教の新体制になった。同年7月、李權正助教は退職した。令和4年(2022年)10月、芳賀聡博士が国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機より准教授として赴任し、金民知博士が助教に採用されました。