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背景・目的

背景

森林域から都市域を含め海洋域に至る複合生態領域では、人類の有機物生産及び消費過程において多種多量の有機性廃棄物が発生しています。これらは適切に処理されなければ、土壌汚染、地下水の硝酸汚染、富栄養化など環境汚染を容易に引き起こします。また、資源の非常に少ない日本において、廃棄物に含まれる有機資源を無駄にすることはできません。しかしながら、現状では必ずしも有効な有機性廃棄物の資源化と適正な再利用がなされているとは言えず、持続可能な循環型社会を構築することが最重要課題です。
 その上で、廃棄物を土に戻し、有機分を再利用するという概念に基づくコンポスト化が鍵となります。わが国では古来より、人間活動から排出される廃棄物を再利用するためにコンポスト化を行ってきました。しかしながら、これまでのコンポスト化の方法ではアンモニア揮散による酸性雨の問題、低窒素コンポストの多量施肥による農地のリン酸過剰、その結果としての周辺水域の富栄養化、さらに作成コンポスト機能の未解明による非効率利用など未解決な問題が残されており、現在のところ、コンポスト化は地球レベルで適応可能な恒久的技術とは言えません。環境負荷が少なく、本来の機能を活かしたコンポスト製造・活用システムの確立が必要です。
 一方、近年は、これらの有機性廃棄物は、有機性資源、バイオマスと呼称されることが増え、再生可能エネルギー源として注目されています。すなわち、有機性資源は、それをリサイクルするだけではなく、リサイクルの過程でエネルギーを回収することも、社会的に大きな意味を持ち始めています。

目的

 本事業は、複合生態領域において発生する多種の有機性廃棄物・有機性資源のコンポスト化などによるリサイクル、メタン発酵などによるエネルギー生産、これらの過程からの有用物質生産および有用微生物検索などを行って、地球レベルで適用できる低環境負荷型資源循環システムを構築し、総合的な有機性資源循環科学の研究・教育拠点を形成することを目的とします。
 これまで独立して行われていた土壌学から環境微生物学、経済学にいたる学問分野を有機的に統合し、フィールド科学を基盤とする社会的還元性の高い学術体系を目指します。東北大学と宮城県等との連携により有機性廃棄物の資源化に関する本学の研究成果を宮城県等が有する大規模施設を活用し、飛躍的に進展させるとともに、本学のポテンシャルを持って資源循環科学の高度技術者(技術者・研究者)の育成を目指します。

主な研究テーマ

  1. 環境負荷低減型コンポスト(アンモニアや亜酸化窒素等の揮散を大幅に抑制できる新しいコンポスト化技術や反応機能解析。土壌への炭素貯留等の機能)
  2. コンポストやメタン発酵などの有機性資源循環の新規技術や高効率化などの開発
  3. コンポスト化やメタン発酵などの過程からの有用微生物検索や有用物質の分離と生産
  4. 有機性資源循環システムの環境評価(リモートセンシングやライフサイクルアセスメントなど)
  5. 生物資源を活用した低環境負荷型資源循環システムを構築
  6. コンポストなどを中心とした総合的な有機性資源循環科学の研究・教育
  7. 市民参加型家庭由来生ゴミのコンポスト化について
  8. 世界農業遺産、バイオマス産業都市におけるバイオマスエネルギーの生産とその利用