研究内容

栄養学分野は、栄養素や機能性食品成分が生体に及ぼす役割とその作用機構の解明を目的として教育と研究を行っています。

  • ビタミンの新規機能の解明として、組織内活性型ビタミンK(メナキノン‐4「MK‐4」)の抗炎症作用と、精巣内におけるテストステロン生合成系への関与の分子機構について、ビオチンについては、糖代謝ならびに高血圧改善機構の分子レベルでの解明

  • 食品中の核内受容体結合成分の生理機能解析

  • 亜鉛栄養と味覚の感受性および味嗜好調節に関する生理学的研究(経口亜鉛シグナルによる摂食調節機構の解析)

  • 食品中に含まれる機能性物質の探索とその作用機構の解明

研究成果

ビタミンの新規機能

ビタミンKが精巣におけるテストステロン産生を上昇させることを初めて示したが、その作用機構について、マウスおよびラット由来ライディッヒ細胞を用いて解析を行い、ビタミンK2のひとつのメナキノン-4がAキナーゼを活性化させることを明らかにした。また、メナキノン-4の側鎖部分であるゲラニルゲラニオールも同様の作用を有していることを示した。
ビオチンの新しい作用の検索を行い、精巣におけるテストステロン、およびエストラジオールの産生上昇作用を見出した。精巣における性ホルモン生合成関連遺伝子の発現量を解析したところ、律速酵素である、CYP11aタンパク質量がビオチンにより上昇していた。一方、CYP11a mRNA量には変化が見られなかったことから、ビオチンはライディッヒ細胞内でCYP11aの選択的翻訳を引き起こすことが示唆された。

亜鉛栄養と味覚の感受性

亜鉛欠乏によって炭酸水の刺激味(ピリピリ・チクチク感)の受容が、亜鉛欠乏が進むにつれて低下することが明らかになり、その低下には亜鉛酵素である炭酸脱水酵素活性の低下が関係していることを示してきた。この酵素は、一般的な基本味にも影響を及ぼしていることを初めて示した。また、ラットに亜鉛欠乏飼料を与えると、飼育3日目で摂食量が低下し、この時に視床下部における摂食促進ペプチドmRNA発現量が低下し、摂食抑制ペプチドの方はその発現量が増大した。亜鉛欠乏ラットに亜鉛を経口投与したところ、摂食量および視床下部の摂食促進ペプチド発現量の増加が認められた。一方、腹腔内投与では、これらの変化は認められず、さらに迷走神経切除によっても認められなかったので、胃腸管内を介在した亜鉛欠乏食シグナルが摂食量の減少を引き起こしていることが初めて示唆された(京大との共同研究)

食品中に含まれる機能性物質

黒ウコン抽出物が抗アレルギー活性、抗アテローム性動脈硬化活性を有することを示した。また、これらの作用が黒ウコンに特異的に含まれるポリメトキシフラボノイド(PMFs)によることを明らかにした。ポリメトキシフラボノイドのうち、5,7-dimethoxyflavone, 5-hydroxy-3,7,3’,47’-tetramethoxy flavoneを用いて作用機序を推定したところ、PMFは活性化マクロファージによる一酸化窒素の過剰産生の抑制、血管内皮細胞での接着因子の発現低下による、単球-血管内皮細胞間の接着を抑制、細胞内活性酸素種の産生抑制などによることを明らかにした(図1)。
プロテアーゼ処理した豆乳による血圧上昇抑制作用を高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて示した。プロテアーゼ処理により生成したアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドによる血圧低下作用であることをin vivoで示した