VOICE: Plant Science [No. 002] 加藤一幾先生(園芸学分野 准教授)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、園芸学分野 准教授の加藤一幾先生にお話を伺います。よろしくお願いします。

加藤一幾先生(園芸学分野 准教授)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 園芸作物(野菜、果樹、花卉)を使って、栽培、生理生態、機能性など幅広い研究を行っています。具体的には、トマトの染色体断片置換系統を用いて、ビタミンC、カロテノイド、アミノ酸などの有用物質の高蓄積機構の研究、オゾン水を利用した野菜栽培(低温・傷害ストレス耐性や高機能性など)、リンゴの幼若性と花成制御機構、リンゴ台木の発根性、デルフィニウムのLEDによる花成制御機構などの研究を行っています。また、震災復興の取り組みとして、福島県葛尾村に植物工場を建てて、マンゴーや有機栽培トマトの事業化研究にも取り組んでいます。

写真/植物工場(福島県葛尾村):マンゴーを栽培している植物工場を背景に、葛尾村のマスコットキャラのしみちゃんと一緒に撮った写真です。凍み餅が特産品です。

ご研究の社会実装について差し支えない範囲で教えてください。

 上記の写真にもある通り、寒冷地でのマンゴー栽培研究を行っており、いわきの企業と協力して事業化を目指しています。果実は高品質で、2021年度には収量も特産地の沖縄の平均以上得られています。今後は、他地域との差別化をはかり、ブランド力を高めるために収穫時期をお歳暮時期に遅らせるべく試験を行っております。
 シイタケ廃菌床を利用した野菜栽培は、農業技術体系や現代農業に寄稿し、Facebookを通じて普及に努めています。廃棄物を再利用をすることで、持続的な農業に貢献できます。
 低濃度オゾン水を利用した野菜栽培は、低温期の育苗に利用することで生育促進効果があることから、オゾン水生成器の企業と協力して、今後農業分野での利用を推進しようと考えています。低温条件でも生育が担保されることから、暖房費の削減、化石燃料の利用量削減など、SDGsにも寄与する技術となります。

写真/低濃度オゾン水によるトマト育苗:低温期に低濃度オゾン水を頭上灌水したときの写真(右の2株)です。左の株は水道水を頭上灌水したもので、低濃度オゾン水処理により生育が促進されます。

東北大学農学部の受験を考えている方に一言お願いします。

 農学部は社会と密接につながった学問を勉強することができます。特に植物生命科学コースは、基礎研究から応用研究まで、遺伝子からフィールドまで、幅広く研究を行っております。今後の農業の発展には、スマート農業、ゲノム編集といったキーワードが重要になっておりますが、これらの研究も行っており、先端技術を学ぶことができます。ぜひ、東北大学農学部で一緒に研究しましょう。

写真/先端技術がふくしまの農林水産業を変えるイノベーション体感デー2021での一コマ。

将来の夢を教えてください。

 将来というか、現実的な夢としては月並みですが、研究成果の社会実装になります。多種多様な研究を行っておりますが、全ては社会に還元できることを考えて研究を行っています。社会実装のところで既に書いていますが、岩手大学在職時から始めたシイタケ廃菌床を利用した野菜栽培は、実用書にも寄稿し、Facebookなども通じ社会に還元されてきています。遺伝子レベルの研究に関してはすぐには難しいですが、いつか社会の役に立つようにしていきたいと考えています。また、研究室に所属した学生を一人前の社会人、研究員として育てて、羽ばたいていくことをみることも大いなる夢の一つです。

写真/陸前高田市の津波被害にあった農場で、土壌復興と肥料効果を狙った試験の仕込み中の写真です。現在の福島県葛尾村での活動も含め、大学教員になってからは震災復興関係の仕事を継続的に続けています。

ありがとうございました。先生の研究成果がこれからもさらに広く社会で活用されるのを楽しみにしています!

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