VOICE: Plant Science [No. 006] 千葉勇輝さん(応用昆虫学分野 博士後期課程1年)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、応用昆虫学分野 博士後期課程1年の千葉勇輝さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

千葉勇輝さん(応用昆虫学分野 博士後期課程1年)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

私は現在、コウチュウ目ハムシ科昆虫の配偶者認識機構について主に研究を行っています。昆虫の配偶行動をじっくりと観察してみると、昆虫の配偶行動は意外にも秩序正しく規則的に進行することが分かります。これは、昆虫の配偶行動が種に固有の生得的な行動パターンに基づいて行われているためです。そして、昆虫が示す一連の配偶行動は、配偶相手由来の刺激(体色・性フェロモンなど)によって制御されています。私は、重要な農業害虫を多く含む分類群であるハムシ科に着目し、彼らの配偶行動を制御している因子とそれらの受容メカニズムについて行動学・形態学・分析化学・電気生理学などの手法を駆使することで解明を試みています。農業上厄介者のハムシ類ですが、研究成果を応用することで殺虫剤に依存しない新たな防除技術の創出ができればと考えています。

この研究分野を選んだ理由を教えてください。

私は幼い頃から昆虫が大好きで、暇さえあれば虫採り網を振っている絵に描いたような昆虫少年でした。いつしか昆虫に関する研究をしてみたいと漠然と考えるようになり、大学入学後の研究室配属では応用昆虫学分野を志望しました。ですので、自身の趣味が高じて、現在所属している応用昆虫学分野での研究生活に繋がっているといったところでしょうか。研究機関で自分の好きな昆虫の研究ができていることは非常に幸せなことですが、その一方で研究は困難と失敗の連続だということを日々実感しています。それでも毎日研究に取り組めるのは、自分の好きなこと、そして熱中できることを追求してきたからだと思います。記事を読んでくださっている方のなかには、進路に悩んでいる学生の方もおられることと思います。ぜひ、ご自身の興味関心を大切になさってください。きっと充実した大学生活を送ることができると思います。

写真/マレーシアで開催された国際学会に参加した時にバタフライパークに立ち寄りました。アカエリトリバネアゲハが多数舞っている光景は感激でした。

学部生時代の留学の経験について教えてください。

私は学部3年時に、東北大学の交換留学プログラムを利用してアメリカ合衆国のUniversity of California, Davisにて10ヶ月間の長期留学を経験しました。大学入学以前から海外留学に興味(憧れ?)があり、学部生のうちに留学しようと決めていました。留学に関しては、語りきれないくらい沢山の思い出がありますが、留学を通して英語力は勿論のこと人間的にも成長できたと実感しています。特に、培った英語力は国際学会でのプレゼンなど現在の研究活動にも生かされています。東北大学は留学希望の学生に対して経済的な支援を行っています。実際に、私は「グローバル萩海外留学奨励賞」という奨学金などを利用して留学費用の全額を自身で賄うことができました。また、留年を心配される方もいるかと思いますが、植物コースには単位互換制度があるため時期を工夫すれば留年する心配もありません。留学しようか迷っている方がいましたら、ぜひ一歩踏み出して留学してみることをお勧めします。

写真/留学中にサンフラシスコへ旅行に行きました。ゴールデンゲートブリッジの美しさに感動しました。

学生に対する経済的支援には他にどのようなものがありますか。

東北大学は学生に対して様々な経済的支援を提供しています。特に博士後期課程の学生に対する支援は、ここ数年で非常に充実したと感じます。博士後期課程の学生が対象となる主な支援には「挑戦的研究支援プロジェクト」と「博士学生フェローシップ」があります。いずれも月額18万円の生活費に加えて研究費として年額34万円が給付され、基本的に3年間(農学研究科博士後期課程の標準修業年数)継続して支援を受けることが可能です。また、博士後期課程に進学希望の学生に対しては、博士前期課程2年(修士2年)から支援対象となる制度もあり「グローバル萩博士学生奨学金」や「学位プログラム」などがあります。ここでは紹介しきれなかった制度もありますが、以上のように研究に意欲的な学生に対する支援はとても充実しています。進学にあたり金銭面で不安を抱えている学生の方もいらっしゃると思いますが、上記の制度を活用すれば経済的な負担は軽減された状態で研究に励むことができると思います。
(※編注:大学院生向け経済的支援制度のまとめが農学研究科ウェブサイトにできました!このページ最下部のリンクからどうぞ。)

将来の夢を教えてください。

害虫防除の観点から、持続的な農業生産の実現に貢献できる研究者になることが現時点での将来の夢です。現在、世界人口は増加し続けており、21世紀末には100億人に達すると予想されています。そして、人口増加に伴う食料不足の深刻化が懸念されていることから、安定的な食料生産は解決するべき喫緊の課題となっています。安定した食料生産を実現するためには、適切な農業害虫の防除が必要不可欠です。しかし、これまで人類は薬剤に強く依存した害虫防除を実施してきたため、多くの害虫種で薬剤抵抗性が発達してしまうという危機的な状況に陥っています。そこで、将来は薬剤散布による殺虫に依存しない新しい害虫防除技術を開発し、害虫防除の観点から農業生産の安定性および持続可能性の向上に貢献できたらと考えています。

ありがとうございました。好きなことに熱中して取り組んでいるからこそ周囲の支援も集まって道が開けるのでしょうね。ますますのご活躍を楽しみにしています!

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