VOICE: Plant Science [No. 009] 陶山佳久先生(森林生態学分野 教授)
植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら
今回は、森林生態学分野 教授の陶山佳久先生にお話を伺います。よろしくお願いします。
陶山佳久先生(森林生態学分野 教授、インドネシアの調査地で大木と)
(木が大きすぎるのでご本人のみ拡大)
現在どんなご研究をなさっているか教えてください。
世界の生物多様性ホットスポットや、日本の各地、地元である東北地域などで、主に森林植物・絶滅危惧種を対象とした森林分子生態学的研究を行っています。特に、それらの種多様性・遺伝的多様性の保全を目指した研究に力を入れています。これらの研究により、世界・日本・各地域に残された生物の生態と多様性を理解し、その豊かさと共生する次世代の構築を目指しています。
写真/ランの仲間の絶滅危惧種であるホテイアツモリを調査したときに撮影した写真。園芸用の乱獲によって激減し、本州の自生地はもうほとんどないため、その遺伝的特徴を調べて保全に活かそうとしています。
この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。
小学生の頃から、漠然と「自然を守る仕事がしたい」と思っていて、大学進学時には豊かな自然の象徴でもある森林を研究する道を選びました。研究を始めた当初は、自然を守るための研究はできませんでしたが、最近ではDNA分析の技術を使って自然を守るという「保全遺伝学」という分野を開拓することができて、ようやく子供の頃の夢が叶いつつあります。
写真/中国の雲南省での調査で、豊かな森の中で生物多様性の素晴らしさをしみじみと感じました。
研究をしていて、楽しいと感じる瞬間について教えてください。
研究上の謎や疑問が解けた時、あるいは困難を乗り越えたときなど、心の底からガッツポーズが出るほど喜びを感じることがあります。フィールド調査では、例えば何日も探し続けていた植物がようやく見つかったときなど、本当に嬉しいですね。研究には本当に楽しいことが一杯あります。
写真/ドイツからの留学生とともに宮城県の金華山でスギの調査を行い、DNA分析をした結果、この大木はおそらくこの地でわずかに生き残ってきたこの地域独特の系統の木であることがわかり、本当に感動しました。
将来の夢を教えてください。
「世界・日本・地域に残された生物の生態と多様性を理解し、その豊かさと共生する次世代を構築する」というのが僕の夢です。将来、少しでも豊かな自然の中で、より豊かな心で、豊かに生活できる世の中にしたいと本気で思っていて、その気持ちが研究に取り組む強い動機とパワーの源になっています。
写真/奄美大島の河口に広がるマングローブ林です。日本では、川のそばの森林というのはほとんど破壊されており、このように広大な河畔林が残されている場所は極めて限られています。夕日に照らされた豊かな森の中の川をカヌーでゆっくり渡っていく人たちを見ていたら、僕らの次の世代にも、こういう世界を残しておきたいとしみじみ思いました。