VOICE: Plant Science [No. 014] 櫻井(岩橋)優さん(京都大学大学院農学研究科 助教)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、コース卒業生で京都大学大学院農学研究科 助教の櫻井(岩橋)優さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

櫻井(岩橋)優さん(京都大学大学院農学研究科 助教)
(作物学分野で博士後期課程修了)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 京都府木津川市にある京都大学大学院農学研究科附属農場に拠点をおき、主に実習と研究室に所属する学生との研究を行っています。実習は水田を担当し、1年を通して播種から収穫、食味試験まで行っています。研究室では、ドローンを利用したイネやダイズの生育評価手法の開発に取り組んでいるほか、様々な作物を対象にした共同研究にも参加しています。

写真/社会人を対象にした実習での田植えの様子です。

この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。

小さいころから農業や食料生産に関わる仕事がしたいと考えており、作物学はその最も根幹の学問だと感じています。作物の生産には、作物そのものの特徴だけでなく、気象や、土壌、そして栽培する人間の事情が絡んでくることもあります。そのような自然と社会の関係性について考えることも作物学の面白いところだと思っています。

写真/木津農場でのダイズ栽培の様子(2022年6月末)。発芽して少し経った頃に豪雨があり、圃場の大部分が水没してしまいました。幸いその後生育は回復し無事に実験ができましたが、気候変動による極端な気象条件による影響を感じています。

学生時代にどんな研究をしていたか教えてください。

 リモートセンシングを利用した農業の実態把握に関する研究をしていました。具体的には、衛星画像を利用してカンボジアの水稲作の長期的な変化を解析し、現地農家へのインタビュー調査の結果から見えてくる栽培管理などの変化との関係を明らかにすることに取り組んでいました。また、カンボジアの山地を切り開いてできた畑作地帯にも調査に行く予定でしたが、あいにく新型コロナウィルスの影響でほとんどいけませんでした。他にも、インドネシアでドローンを利用した干ばつ害の評価手法の開発にも取り組んでいました。

写真/カンボジアの水田。乾期のため、大きな水路にもほとんど水がなく、灌漑水が十分に得られる場所でしか乾期作は行えません。東南アジアの稲作地域では、地平線の先まで水田が続く景色が見事です。

将来の夢を教えてください。

 リモートセンシング技術の活用により、農業がより楽しく魅力的になることが一番の目標です。そのために、適切な栽培管理のためのデータ収集・解析技術の開発や、気候変動に対する対策などに取り組んでいきたいです。農業は工業と違い、大半が気象条件に左右されますが、その影響をできるだけ緩和したり、対策のオプションを複数用意したりすることで、より安定的な栽培を実現したいです。農業が人気の職業の一つになってほしいと思っています。

写真/木津農場への通勤途中に水田地帯があり、田植えが終わった頃の様子です。季節を感じられる景色なので気に入っています。このような風景があるのも農業をしている人がいるからなので、なくならないように頑張らないといけないと感じます。

作物生産には作物そのものだけでなく気象・土壌や栽培する人間の事情が絡んでくる、というのは実験室にいるだけでは見えてこないポイントですね。また、それらを技術でうまく解決しようというお考えをとても興味深く伺いました。研究のさらなるご発展を楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

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