VOICE: Plant Science [No. 015] 宇田川 久史さん(日本たばこ産業株式会社 葉たばこ研究所)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、コース卒業生で日本たばこ産業株式会社の宇田川 久史さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

宇田川 久史さん(日本たばこ産業株式会社 葉たばこ研究所)
植物遺伝育種学分野(博士後期課程修了)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 葉たばこの遺伝育種研究を行っています。「葉たばこ」と聞くと馴染みのない方が多いかもしれませんが、実験材料でよく使うタバコを作物として扱う場合の呼称が「葉たばこ」です。葉たばこ品種開発に役立つ遺伝子の探索に向け、新規ゲノム解読や変異体解析にこれまで取り組んできました。現在は、構築した研究基盤を活用して新規に同定した遺伝子が実際にどのような効果を持つのかを圃場で検証したりしています。

写真/葉たばこは世界100ヶ国以上で栽培されています。ウイルス病抵抗性遺伝子の同定をした際には、アフリカの現地機関と一緒に抵抗性を評価したりもしました。現在はブラジルでも評価試験を行っています。

研究をしていて、楽しいと感じる瞬間について教えてください。

 順遺伝学的なアプローチで重要形質に関わる原因を見つけられた時です。タバコはゲノムサイズが約4.5 Gb(45億文字列)あると言われています。その大量の文字列の中から原因変異を探し出せた時は我ながらがんばったなと思います。
 もう一つ、この原稿を考えてながら気付いたことですが、研究計画を立てるのも好きかもしれません。研究背景を整理してしっかりと計画を立てられた時は満足感がありますし、実際に取り組んでみてもスムーズに楽しく進められることが多い気がします。

研究の息抜きになるような趣味はお持ちですか。

 渓流釣りを趣味にしています。新緑の季節は特に気持ちがよく、歩いているだけでもとても癒されます。家族で近所の川原に行ってBBQをしたりもしています。ペール缶でタンドール窯が自作できるとネットで見てDIYしてみたのですが、これを使うとびっくりするくらいおいしい焼き芋が作れます。興味のある方はぜひ。

写真/この写真は栃木県で撮ったものですが、東北でも毎年釣りをしています。スマホの電波が届かないようなところにもよく行くので、熊に会わないか心配です。

将来の夢を教えてください。

 私が企業で研究することを選んだ理由の一つとして、成果をより直接的にお客様に届けられる、ということがあります。消費者の方々はもちろん、事業継続に欠かせない世界中の農家の方々も大切なお客様です。漠然としていますが、お客様の心の豊かさにつながる実用的な研究成果が出せたらいいですね。また、研究者の端くれとしては学術的に価値のある研究にも取り組んでいきたいところです。会社のためにもなって、社会のためにもなって、学術的にも価値がある…一体どんな研究をすればいいのか、じっくり考えていきたいと思います。一緒に考えていただける方もお待ちしていますよ!

順遺伝学的なアプローチは、近年の第2世代・第3世代シーケンス技術の発展に伴ってずいぶん加速したことと思います。企業での品種開発のスピード感も増して、ますます楽しくなりそうですね。研究・開発のさらなるご発展を楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

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