VOICE: Plant Science [No. 017] 河崎有希さん(森林生態学分野 修士2年)
植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら
今回は、森林生態学分野 修士2年の河崎有希さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
河崎有希さん(森林生態学分野 修士2年)
現在どんなご研究をなさっているか教えてください。
森林の枯れ木を対象として、生息する菌類種や菌類による枯れ木の分解パターンがどのような要因で変化するのかを調べています。研究を進めるうちに、枯れ木の炭素循環を駆動し、他の生物が栄養分として枯れ木を利用できるようにする菌類の活動の奥深さを知りました。修士課程の研究では、北は秋田から南は屋久島に至るまで気候の異なる広い範囲のスギ林で枯れ木のサンプリングを行いました。研究を通して国内国外を問わずいろいろな森林を訪ねさせていただいたのはとても貴重な経験になりました。
写真/秋田県仁鮒での調査にて:直径1 m近いスギの巨木が立ち並ぶ様子は壮観でした。
この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。
大学入学以前は興味のある事柄が複数あったため、どのような学部に入るかは非常に悩みましたが、最終的には子供の頃から身近にあった森林や自然についてより深く理解したいと考え、現在の学部と研究室を選択しました。昨年、調査のために地元の富山県にある美女平というスギやブナが生い茂る原生林を訪れた際は、小・中学生の頃に意識していなかった枯れ木や小さな生物といった構成要素が目に留まり、研究を通じて森林という複雑な景観を構成する各要素とそれらが持つ役割を理解することの楽しさを実感しました。
好きな食べ物や料理、得意料理などがあれば教えてください。
現在は、大崎市鳴子温泉にある川渡フィールドセンターで研究を行っているのですが、春になると学生のみんなでフキノトウやタラの芽、コシアブラといった山菜を収穫してきて、天ぷらなどにして旬の味覚を楽しんでいます。少し外に出れば季節の移ろいを感じられるのは川渡フィールドセンターの良いところかもしれません。
写真/先日収穫してきたフキノトウ:ふきのとう味噌にしていただきました。
将来の夢を教えてください。
将来の目標は、森林の機能を活かしてカーボンニュートラルな社会の実現に貢献することです。木材を森林の外に持ち出して利用することも大切ですが、枯れ木として森林内に残すことで炭素の貯蔵庫やさまざまな生物の住処として機能させることができます。菌類は分解を通じて枯れ木の炭素貯蔵量をコントロールする存在であるため、これまで研究してきた内容を活かした森づくりによって森林が持っている炭素貯蔵能力を最大化できたら嬉しいです。
写真/京都府芦生の天然林にて:至る所に倒木が見られ、さまざまな菌類が枯れ木を利用する姿を垣間見ることができました。