VOICE: Plant Science [No. 021] 千葉あおいさん(森林生態学分野 博士前期課程1年)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、森林生態学分野 博士前期課程1年の千葉あおいさんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

千葉あおいさん
森林生態学分野(博士前期課程1年)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 私は木材腐朽菌の多様性が分解速度にどのような影響を与えているかについて調べています。4種類の腐朽菌をそれぞれブナ角材に定着させ、様々なパターンで16個ずつ組合わせて培養実験を行い重量変化を測定するのですが、実験では合計で2,240個の角材を処理することになりとても作業時間がかかりました。作業が忙しいときには同級生や研究室の先輩にも手伝ってもらいました。(川渡フィールドセンターの皆さんにはとても感謝しています。)この培養実験では多様性の増加によって腐朽菌による分解が促進されることが分かったのですが、現在はこのメカニズムを解明するための分析実験を行っています。

写真/培養実験後の角材を割った様子。2種類の菌の領地が丁度角材を半分ずつ占めています。

研究をしていて、楽しいと感じる瞬間について教えてください。

 腐朽菌を培養して観察していると、だんだん菌種の個性が見えてくるようになってきて、それが楽しいですね。例えばカワラタケは白い菌糸を角材の周りにも伸ばしてマシュマロみたいにモコモコモチモチになるけど、ネンドタケはうっすら黄色い菌糸を這わせるように伸ばします。菌種同士が出会うと片方の種がもう片方の種を倒して置換することがあるのですが、その強さ関係にも相性があり、単純に強さ順に並べることはできません。ある菌種が3菌種のうちまずどれを置換しに行くのか、戦略が見えて面白いですよ。

写真/角材に定着させた4種の菌糸。左上:ツキヨタケ、右上:ネンドタケ、左下:カワラタケ、右下:クロコブタケ。

研究の息抜きになるような趣味はお持ちですか。

 実験中は待ち時間が生まれることがしばしばありますが、最近はよくラップを聴いていたこともあり、この時間に腐朽菌の専門的な知識をアピールするラップを作りました。ラップのリリックを書くのも作曲するのも初めてのことでしたが、腐朽菌について勉強したことが作品になるのはとても嬉しく、あっという間に出来上がりました。学名で韻が踏めるとすっきりとした気持ちになり、さらに知識を身につけたくなります。菌ラップ以外では、ブリティッシュ・ベイクオフという番組の影響でパンを焼いていましたね。

写真/バターロールを焼きました。美味しかったです。

バターロール美味しそうですが、菌ラップが気になってパンの話が頭に入ってきません。。動画はありますか?

音源はできているのですが動画はまだ完成していません。もうすぐできます。リリックはこんな感じです。
(編注:リリックは動画と一緒に後日公開予定!!お楽しみに!! 11/7追記:公開されました!

これは…いいですね。動画が完成したら特別編の記事でリンクを貼らせてください。それでは恒例の最後の質問ですが、将来の夢について聞かせていただけますか。

 私は現在の研究内容とは少し異なる職業を選択するつもりですが、何らかの形で森林の多様性保全に関わっていきたいと考えています。植物や動物だけでなく、腐朽菌を初めとする森林微生物の多様性も、枯死木の分解を通して地球の炭素循環に関わるなど大きな役割をもっています。また、培養実験や研究発表を通して培った観察力や根気、スピーチ力も将来様々なアイデアを実現し、社会に貢献するのに役立つと考えています。

今日はどうもありがとうございました。戦略の最適解がおそらく頻度依存的になるのでゲーム理論的に考えても面白そうですね。生態系の本質に実験で迫れそうで楽しみです。腐朽菌に夢中だからみんなに普及したい気持ちがひしひしと伝わってきました。菌ラップ、楽しみにしています!

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