VOICE: Plant Science [No. 023] 赤松佑紀さん(農研機構 畜産研究部門 研究員)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、コース卒業生で農研機構畜産研究部門研究員の赤松佑紀さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

赤松佑紀さん(農研機構 畜産研究部門 研究員)
栽培植物環境科学分野(博士後期課程修了)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 飼料用トウモロコシの栽培技術に関する研究に取り組んでいます。日本は、牛、豚、鶏のエサとして利用される濃厚飼料のトウモロコシ(子実)のほぼ全量を海外から輸入していて、「世界一のトウモロコシ輸入国」ともいわれています。近年、輸入トウモロコシの価格が高騰したこと等を背景に、国内でトウモロコシの子実を収穫して濃厚飼料として利用する事例が増えています。そこで、トウモロコシの収量向上を目指して、栽培学の視点から研究に取り組んでいます。

写真/トウモロコシ栽培試験の様子

この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。

 私の所属していた栽培植物環境科学分野は、宮城県大崎市鳴子温泉の東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター(通称、川渡フィールドセンター)にあります。分野の「環境と調和した持続的な作物生産技術の開発」という研究テーマに興味があったことはもちろんですが、農業を身近に感じられる環境で生活をしてみたい、という気持ちもあり、この分野を選択しました。
 毎日、田畑を眺めながら研究室へ通い、春には田んぼが水鏡になり、夏にはイネが青々と茂り、秋になると一面黄金色になり、冬には田んぼでマガンやハクチョウが食事をし・・・と農業があるからこその四季折々の風景を感じながら生活を送りました。この地域は、現在は世界農業遺産に登録され、「大崎耕土」と呼ばれています。この生活を通して、食料生産とは別の農業の価値を実感することができました。

写真/早朝、田んぼへ出勤するマガンの様子。 拡大写真

マガン、沢山ご出勤ですね(笑)研究をしていて、楽しいと感じる瞬間について教えてください。

 作物を扱う分野の研究は、春~秋は圃場に出て調査、冬は研究室で化学分析やデータ解析など季節によって仕事内容が移り変わります。天気の良い日に体を動かして調査をすることも、寒い日に暖かい部屋で黙々と分析やデータ解析をすることも、達成感があり楽しいです。思ったような結果が出ないことも多いですが、それまでの過程を楽しんでいます。
 また、研究対象である飼料作物は植物ですが、背景は畜産なので、会議やセミナーでは畜産分野の内容を見聞きすることが多く、知見が広がります。様々な分野の研究を見聞きして、農業・畜産について考える機会が多いことも、有意義だと感じます。

将来の夢について聞かせてください。

 言うまでもなく、農業は食料生産の場という意味で重要で、私は美味しいお肉とごはんをいつまでも食べたいので、農業・畜産業が衰退しないよう、研究を通して少しでも貢献したいと思っています。また、幼少期に田畑で生き物を観察したことや、土に触れて楽しかった体験は今でも覚えていますし、川渡での生活で感じたような、農業があるからこそ体験できることや、風景があると思います。その体験や風景が将来も続いていくよう、農業の持続的な発展に貢献したいです。

大崎耕土のあたりへ行くと、大地があって、そこで人間が農業を営んでいる、と実感します。都市に住んでいると忘れがちですが、農業の持続的な発展を考えるにはまずああいう風景を見ることからかもしれませんね。川渡やフィールドでの研究ならではのお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました。畜産につながるトウモロコシのご研究もご発展を楽しみにしております。

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