VOICE: Plant Science [No. 028] 駒形泰之さん(宮城県農業・園芸総合研究所)
植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら
今回は、コース卒業生で宮城県農業・園芸総合研究所の駒形泰之さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。
駒形泰之さん(宮城県農業・園芸総合研究所)
森林生態学分野(博士後期課程修了)
楽しい写真をありがとうございます(笑)現在どんなご研究をなさっているか教えてください。
ナミハダニなどの農業害虫を効率的に防除するための技術開発や研究をしています。その中では、遺伝的集団構造解析や景観生態学的解析を通じて害虫類の移動分散について推測したり、天敵類の利活用のために土壌生態系の生物について調べたりしています。また、修士までやっていた木材腐朽菌の研究も細々と続けています。
写真/褐色の球形をしているのが、シロアリ卵に擬態するターマイトボールという木材腐朽菌の菌核菌です。人知れずひっそり生きている姿にシンパシーを感じます。
博士後期課程に進学した理由・きっかけを教えてください。
私は社会人学生として博士後期課程に進みました。この選択をしたのは、自分の頭でものを考える能力を養いたかったからです。仕事で関わる方々にはそうした力を持っている方が多くいますから、業務をやりながらでもそうした能力を養えると思います。ただ私自身はそうした能力が決して高くないと自覚していましたし、その状態のまま漫然と過ごしてしまいそうな怖さもありました。大学は主知主義的な数少ない機関だと思います。そこにいるエキスパートの方々との交流を通じて考える力を磨く機会を得られるだろうと考え、進学を選びました。
写真/社会人になってから川渡の圃場を見ると、学部生時代の実習を思い出してしみじみしました。
そうですね、大学の真の価値は単なる知識や技術の習得を超えたところにあるはずです。ところで、研究の息抜きになるような趣味はお持ちですか。
最近はあまり行けていませんが、イカ釣りです。イカは大きな目を発達させていて、やはり視力も良いらしく、0.8近くになるという算出結果もあるようです。また、400~500 nmあたりの波長(※編注:紫~青~青緑)を感知するようで、海の色との兼ね合いを考えながらルアーの色を変えたりするのも楽しいです。奥深いしイカも美味しいしで、特に天気の穏やかな日に釣りをしていると、良い趣味だとしみじみ思います。
写真/月夜の松島で釣ったアオリイカです。透き通った体にカラフルな斑点や目元が美しいです。
そういえば青く光るイカもいますね。自然との知恵比べ、という点で研究に通じる楽しさを感じます。最後に、将来の夢について聞かせていただけますか。
森林には多くの植物が存在するのに、農地で大問題になる農業害虫がなぜ森林では問題になっていないのかについて興味があります。
森林で働いている何かしらのメカニズムが農業害虫の増殖を抑制しているのだと思いますが、このメカニズムが明らかになって、それを農地環境に再現することが出来れば、害虫被害を未然に防ぐことが出来てくるかもしれません。
そのためには腐植連鎖の観点だとか、景観生態学的な観点などが活かせたりしないかと考えています。こうした研究を通じて、持続的な農業生産に貢献出来れば良いと考えています。
写真/世界的な農業害虫のナミハダニ。ただ、これが森林の植生に寄生していることをほとんど見たことがありません。