東北大学 大学院農学研究科
生物海洋学分野

生物海洋学

アジア圏における赤潮原因プランクトン夜光虫の流動ダイナミクス

 宮城県沿岸で赤潮(プランクトンの大増殖によって海が着色する現象)を見ることはほとんどありませんが、
関東以西では初夏の風物詩としてテレビやニュースに取り上げられることがあります。



 赤潮の原因となるプランクトン種は様々ですが、最も頻発する原因種として夜光虫の存在が知られています。



 顕微鏡で観察すると、一つの細胞が上図のように風船のような球形をしていて、海水の表面に浮いています。
海表面に浮いているため潮流の影響を受けやすいのが一つの特徴です。
 
 日本沿岸に存在する夜光虫と外国に存在する夜光虫のあいだで、外見には違いが全くありませんが、
遺伝子では明瞭な差が生じています。それを利用して、どの国からどの国へ潮流等による自然分散が
発生しているのか、また、タンカーのバラスト水や水産生物の輸出入によって人為的に分散したのか
追跡することが可能となります。

 私たちの研究グループはすでに日本沿岸域の8箇所、そして韓国、インドネシアとの国際共同研究において
DNAを解析済みで、現在、中国や他の東南アジア各国の夜光虫についても解析に取りかかっています。

 現在の研究範囲はまだアジア圏に留まっていますが、世界中の研究者とチームを組み、
夜光虫DNAを地球規模で比較することを目指しています。

 世界の海は一つで繋がっており、潮流等によって有用な微生物も有害な微生物も運ばれてきます。
陸上の動植物ほど強く移動が制限されているわけではありません。

 私たちはこの夜光虫の遺伝子解析によって、国から国へどの程度の地球的距離の流動が生じているか、
そして外国産プランクトンの日本国内への人為的な運搬が生じているかどうかを調査しています。


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