VOICE: Plant Science [No. 030] 山本雅也先生(植物遺伝育種学分野 准教授)
植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら
今回は、植物遺伝育種学分野 准教授の山本雅也先生にお話を伺います。よろしくお願いいたします。
山本雅也先生(植物遺伝育種学分野 准教授)
(編注:後ろの黒い服の人が山本先生です。Macで講義資料を作っている人ではありません。念のため。)
現在どんなご研究をなさっているか教えてください。
アブラナ科植物の自家不和合性(編注:花の柱頭に自己の花粉が受粉しても種子ができず、他者の花粉が受粉した時のみに花粉が機能して種子ができる性質)の分子機構の研究を行っています。自家不和合性の理解は、アブラナ科野菜の種取り(採種)や品種育成(育種)に重要です。そのため、アブラナ科植物の自家不和合性は昔から研究されています。以前は、アブラナ科野菜のBrassica rapa(ハクサイ、カブ、コマツナなど)やBrassica oleracea(キャベツ、ブロッコリー)などを研究材料に精力的に研究が進められてきました。私のグループでは、アブラナ科野菜に加えて、モデル植物のシロイヌナズナも材料に用いて自家不和合性の分子機構の研究を行っています。シロイヌナズナは形質転換が容易なため、アブラナ科野菜では解析が難しい多くの変異遺伝子を用いた解析も行え、そのような利点を活かした研究も積極的に展開しています。最近の研究成果は、こちら(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/10/press20241018-03-dna.html)やこちら(https://www.agri.tohoku.ac.jp/jp/course_topic/20220601-2/)です。
写真/交配中のBrassica rapaの写真。交配後に袋をかけて、目的外の交配が行われないようにしています。
この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。
学生時代の研究を通じて、「遺伝子が新しい機能を獲得する際に細胞内での合成可能性が制限要因にならないか」、と疑問を持ちました。将来この疑問に答えられるような研究がしたく、アブラナ科植物の自家不和合性を研究している研究室でポスドク研究員を行いました。さらにポスドク3年目に次のポジションを探している時、たまたま今の研究室が助教職を公募しており、応募し採用され、今に至っています。
つまり、科学的興味から研究課題を選んでいたところ、今の研究領域/分野に流れ着いていました。ただ植物育種の分野では、多くの研究者が様々な植物を材料に様々な現象を研究しており大変おもしろい分野です。また、得られる研究成果が新品種の育成に活用され、農業現場の課題や社会的課題の解決に貢献できる可能性も面白い点の一つです。
写真/ドイツで開催されたBrassica2025で出会った研究室の卒業生との記念撮影。左から順に、研究室に在籍中のM2学生、筆者、神戸大の藤本先生、Wilfrid Laurier UniversityのZou先生。
なるほど、ご紹介くださった「最近の研究成果」の1つ目の方は合成可能性・機能獲得への興味との関連があるのですね。最近研究で嬉しかったことは何かありますか。
ある変異体の解析を行っていたところ、自家不和合性の形質に変化があり、その原因はタンパク質量の減少であり、RNA量は減少していないと考えました。しかし実際に、実験を行ったところ、予想に反してRNA量が減少していました。予想外の結果が得られて、大変ワクワクしました。研究では、予想外の結果がでるとワクワクします。予想(仮説)通りの結果ですと、ふーん、って感じです。
面白そうですね。予想通りの結果だと、もしかして自明のことをわざわざ示そうといるのではないかと不安になることもありますね(笑)最後に、将来の夢について聞かせてください。
1つ目は、学生時代からの疑問「遺伝子の新規機能獲得における細胞内での合成可能性が限定要因になるのか」に答えたいと思います。2つ目は、アブラナ科野菜の自家不和合性の研究を行っていますので、自家不和合性研究の成果が採種産業の役立つと嬉しいと思っています。