平成30年度 外国派遣研究者報告

18th Asian Australasian Animal Production Congress(AAAP 2018) 参加報告書

東北大学大学院農学研究科
 資源生物科学専攻 動物生産科学講座 動物生理科学分野
博士課程前期1年 太箸 誠

 私は、8月の1日から4日にかけてマレーシアのクチンで開催された18th Asian Australasian Animal Production Congress (AAAP2018)に参加し、自分が行った研究に関するポスター発表を行いました。
 クチンは、マレーシアのボルネオ島の西部に位置するサラワク川のほとりにある港町で、中国やインドなど様々な文化が入り混じった不思議な街でした。食べ物に関しても周辺国の文化の影響を大きく受けており、中華料理やインド料理の要素を多く取り込みつつもどこかマレーシアを感じさせるエスニックな料理でとても美味しかったです。滞在期間中クチンの気温は30℃前後であったものの、乾期にあたる季節であったため湿度は低く、日本に比べて過ごしやすく感じました。
 AAAPは、2年ごとにアジア・オセアニアの各都市で開催される畜産分野の学会です。アジア・オセアニア諸国から多くの研究グループが参加をしており、発表数は口頭とポスターを合わせて約550と非常に大規模な学会でした。初日に行われたオープニングセレモニーでは、現地の伝統的な踊りや音楽などが披露されたり、他国の研究者の方々と談笑したりと、とても賑やかな夕食会になりました。
 私のポスター発表は初日に行われました。私のポスターのテーマは「Effects of butyrate in bovine rumen epithelium using Ussing Chamber」であり、以下に示す内容を発表しました。反芻動物は離乳に際して第一胃(ルーメン)の上皮組織が発達し、エネルギー源である揮発性脂肪酸(VFA)を吸収します。VFAの中でも酪酸は、in vivoにおいて上皮組織の発達を促進する効果を有しています。しかしin vitroにおいてはルーメン上皮細胞の増殖を抑制するという真逆の効果を有しています。この酪酸がルーメン上皮組織に対する作用機序についてUssing Chamberという器具を用いて分析しました。Ussing Chamberとは、ルーメン上皮組織を挟んだ後、管腔側と基底側にそれぞれ培養液を入れることで、ルーメン上皮組織を、生体内を模した状態で培養することのできる器具である。その結果、離乳前の子牛のルーメン上皮組織に対しては大きな影響はみられませんでした。しかし離乳後の成畜のルーメン上皮組織に対しては、酪酸を添加することによって1時間後のルーメン上皮組織のバリア機能はControlに比べ低下するのですが、6時間後のバリア機能は回復傾向にあることが明らかになりました。また遺伝子発現に関して分析したところ、ルーメン上皮細胞間の結合を担うタイトジャンクションの遺伝子発現が有意に低下していることが明らかになりました。
 私自身学会に出席するのは初めてであり、その発表が英語ということもあってとても緊張していましが、私の研究内容に興味を持ち、質問してきてくださった海外の研究者の方々のおかげで後半にはリラックスして発表することができました。しかしながら自分の英語力の無さを痛感するとともに、自分の研究内容を十分に伝えることができなかったことに悔しさを感じ、英語の会話力を向上させなければと強く思いました。2日目以降は他国の研究者の方々の発表を聞き、積極的にコミュニケーションをとることで、自分の研究に対する新たな視点および解釈を多く得ることができ、また自分の研究分野以外の研究に関しても広く勉強することができたため非常に有意義な学会でした。
 今回の学会への出席は、自分の研究に関して多くの知識を得られたという点だけでなく、研究や英語勉強に対するモチベーションの向上という点においても大変貴重な経験になりました。このような機会を得られたのも、渡航費を助成してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様のおかげだと深く感謝しております。今回得られた知識、経験を活かし、より一層研究活動に精進していきたいと思います。