令和4年度 外国派遣研究者報告

ISCE-APACE 3rd Joint Meeting参加報告


所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻専攻 応用昆虫学分野
学年:博士課程後期1年生
氏名:千葉 勇輝

 私は2022年8月8日から8月12日まで、マレーシアのクアラルンプールで開催されたISCE-APACE 3rd Joint Meetingに参加し、本国際会議において口頭発表を行いました。今回参加した国際会議は、Asia-Pacific Association of Chemical Ecologists (APACE)およびInternational Society of Chemical Ecology(ISCE)という2つの化学生態学分野の国際学会によって共同で開催されました。昨今のコロナウイルス蔓延の影響も踏まえ、オンサイトとオンライン併用の学会となりましたが、約270題の演題が発表されオンサイトでの参加者も多くいたため、大いに盛り上がった国際会議となりました。
 私は、コウチュウ目ハムシ科昆虫における体表ワックスの情報化学物質としての機能とその受容機構における味覚受容器の重要性について口頭発表を行いました。学会発表は初めての経験ではありませんが、以前発表した全ての学会発表がコロナウイルスの影響によりオンラインでの発表でしたので、本国際会議が私にとって初めてのオンサイトでの学会発表となりました。発表は少し緊張しましたが、幾度となく実施した発表練習のおかげで簡潔かつ明瞭な発表を行うことができました。また、私は本国際会議にてStudent Travel Awardを頂戴し、Future Generations of Chemical Ecologistsというシンポジウムで発表を行うことができたため、幸運にも多くの方が発表を聴講してくださいました。質疑応答では4名の方から質問を頂き、いずれも活発なディスカッションができました。さらに、発表後も多くの方からお声がけいただき、研究に関する意見交換を行うことができました。発表前は、自分の研究に興味を抱いてくれる方がどれだけいるか不安に感じたこともありましたが、予想を上回る反響が得られ、今後も研究を精力的に進めていくための糧にすることができたと感じています。
 また、本国際会議を通して、他の参加者らの研究発表から大いに刺激を受けることができました。多大な労力を要するフィールドワークや私が知らない解析法を駆使した研究など、魅力的な研究発表を多く聴講することができました。その中には、自分の研究に生かせそうな知見を得られた発表もあり、研究をさらに発展させていくうえでも本国際会議は有意義なものでした。また、国際会議開催中に出会った研究者の中には連絡先を交換させていただいた方もいるので、国際共同研究なども視野に入れたグローバルな研究活動を展開できたらと考えています。
 今回のマレーシアへの渡航は、私の人生で初めての東南アジアへの渡航でした。国際会議開催期間中は、合間を縫っていくつかの観光地にも赴くことができました。訪問した全ての場所で、日本とは全く異なる風土や文化、食、人々の価値観に触れることができ、日本では得がたい多くの経験を得ることができました。また、現在ではコロナウイルス蔓延に伴う渡航制限が緩和されたとはいえ、ワクチン接種証明に関する手続きやマレーシアの病院におけるPCR検査の実施など、多くの手続きが必要となる中での海外出張でした。また、単身での海外出張ということもあり、不安に感じていた点もありましたが、順調な海外出張にすることができました。国際会議への参加を通して研究者としてだけでなく、人間的にも成長できたと自負しております。最後となりますが、国際会議への参加を支援していただいた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。皆様のご支援なくして実りある海外出張はなしえませんでした。今回の海外出張で得た経験や知識などを、今後の研究生活や人生に生かすよう努める所存です。

19th International Aspergillus Meetingおよび16th European Conference on Fungal Genetics参加報告

所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:薄田 隼弥

 私は2023年3月3日から3月10日にかけて,オーストリアのインスブルックにて開催されました19th International Aspergillus Meeting (Asperfest 16) および16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG 16) に参加いたしました.私は両会議にてポスター発表を実施した他,Asperfest 19 におきましては口頭発表にも招待され,発表いたしました.
 旅程は本会であるカビ分子生物学会ECFGのサテライトワークショップであるAsperfestの参加より始まり,これはSoWi Universityにて開催されました.ワークショップとなりながらもポスター演題数は100弱,と日本国内で参加する同分野の学会レベルに匹敵するもので,糸状菌Aspergillus属に関わる多くの内容が議論される大変内容の濃い会議でした.私は1日目にAspergillus oryzaeの培養工学に関する内容のポスター発表を,2日目に同内容にて口頭発表を実施いたしました.ポスター発表では,他大学の研究グループから鋭い質問をいただいたほか,糸状菌培養に関わる高い技術を持つ企業の研究者と,国内学会ではできないような詳細な議論をすることができ,改めて海外の研究活動のレベルの高さと情報収集の卓越さを実感することとなりました.本ポスター発表につきましては,スポンサー企業の選出による学生ポスター賞を受賞させていただきました.2日目に行われた口頭発表では,私は要旨内容から選抜されての招待口頭発表という区分で発表させていただきました.学会のメインテーマはカビの分子生物学であり.私の研究は培養工学寄りということでテーマに若干の解離があるかと思われましたが,質疑応答では興味を持ったご意見を多数いただき,また自身とは異なる視点の質問も受けたことで自身の研究に対する視野が広がる貴重な経験となりました.口頭発表終了後にホテルへ戻る帰路でも,他国の参加者から発表内容に関してご質問を受け,多くの方に関心を持っていただけたことと感じました.
 3日目以降はCongress InnsbruckにてECFG大会が始まり,本会では私はAsperfestと同様の内容にてポスター発表を実施いたしました.本ポスター発表では,他国で糸状菌培養を研究される研究者とも議論することができ,研究室実務レベルのトライアンドエラーなど対面学会ならではの現実的な議論をさせていただきました.また,先日までのAsperfestにて私の口頭発表に興味を持ってくださった方から,もう一度詳しく発表してほしいというようなご要望もあり,口頭発表にて多くの研究者に私の研究をアピールすることができたのではと実感できました.
  また,本会では日本の他大学より参加された研究グループの皆さんとも交流を深めることができました.これまでの国内学会ではコロナ禍によりオンライン開催が多く,見ず知らずで終わってしまいがちでしたが,国際学会の対面の場にて糸状菌研究の議論ができ,大変有意義な時間となりました.
 最後になりましたが,本会議への参加にあたりまして助成賜りました貴財団へ厚く御礼申し上げます.ポスター賞受賞をはじめ多くの大変貴重な経験をさせていただく機会となり,大学院での研究過程において非常に重要なステップアップとなりました.重ねて御礼申し上げるとともに,今後も研究活動へ一層邁進してまいります.

 

国際学会参加報告

所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:高橋 尚央

 私は2023年3月4日から3月5日にかけて開催された19th International Aspergillus Meeting(Asperfest19)と、2023年3月6日から3月8日にかけて開催された16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG16)に参加し、発表を行いました。ECFG16は世界最大規模の真菌遺伝学学会であり、Asperfest19は真菌の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを対象にした会議でした。いずれの学会もオーストリア・インスブルックで開催されました。インスブルックは、オーストリア西部チロル州の首府で、周りをアルプスの山々に囲まれた風光明媚な土地です。学会期間中は天候にも恵まれ、まだまだ雪の残る壮大なアルプスの山々を眺めながら、気持ちよく過ごすことができました。
  私は二つの学会それぞれでポスター発表を行いました。初めての国際学会ということもあり英語でのコミュニケーションには苦労しましたが、こちらが熱意をもって接すると、どの研究者も熱意をもってそれに応えてくれました。コロナウイルスの影響で対面での学会がなかなか開催できない昨今の事情もあり、私自身もほとんど国内の対面学会での発表経験が無い状態で今回の国際学会に臨みました。緊張しながらも学会期間中に様々な国の研究者とディスカッションを交わしましたが、対面でのコミュニケーションでしか伝わらないような各人の研究に対するこだわりや、サイエンスに対する情熱が感じられ、とても刺激を受けました。またこのような場所で議論を交わしたい、と思えるような有意義な時間でした。
私の研究では、麹菌Aspergillus oryzaeの胞子・菌糸の表面を覆う『ハイドロフォビン』と呼ばれる小サイズの界面活性タンパク質を扱っています。今回学会で発表した内容はハイドロフォビンの物理化学的な解析を行ったものであったため、遺伝学的な研究の発表が多いAsperfest19・ECFG16では少し引きの弱い内容であったように感じました。しかし、他の研究者の発表を見て、テーマに関わらず内容のまとめ方や見せ方、発表の仕方がよく練られており、魅力的な発表に仕上がっていることに気が付きました。今回の私の発表が聴衆の気をあまり引けなかったのは、私自身のプレゼンテーション能力の不足であったと思います。自身の研究をより魅力的に他者に伝えることは研究者の重要な素養の一つであることを改めて実感しました。また、そもそも他者の目に魅力的に映るほど研究意義・問いを持った研究であったのか、その問いに答えるのに十分なデータセットを提示できていたのか、という研究全体のデザインについても更なる検討が必要であるように感じました。
このように反省点が多く上げられる学会でしたが、楽しいことも多々ありました。ハイドロフォビンはマイナーな研究対象ではありますが、ECFG16では同じくハイドロフォビンを扱うドイツの研究者と出会うことができました。話題を共有できることが嬉しく大分話し込んでしまったのですが、有益な情報交換ができとても貴重な体験となりました。また、学会後には韓国の研究チームと一緒に夕食に出かけ、同年代の学生と交流することができました。研究の話のみならず、お互いの国の文化や流行について話し、楽しい時間を過ごすことができました。
今回の海外出張では、研究発表を通して様々な課題を見つけることができました。研究デザイン、プレゼンテーション、コミュニケーションなど研究者としての能力を総合的に鍛える必要があると強く感じました。今後の研究のモチベーションにつながる素晴らしい経験ができたと思います。最後になりましたが、今回の国際学会に参加するにあたり、今回の渡航費用を助成して頂いた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を日々の研究活動に生かし更なる成長を遂げるため、より一層精進してまいります。