平成28年度 外国派遣研究者報告

29th Fungal Genetics Conference
および14th International Aspergillus Meetingの参加報告書

東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 微生物機能開発科学講座 応用微生物学分野
博士前期課程二年
宮澤  拳

 私は2017年3月13日から14日に開催された14th International Aspergillus Meeting (Asperfest14)および同14日から19日にかけて開催された29th Fungal Genetics Conference (FGC)に参加しました。いずれの学会もアメリカ合衆国カリフォルニア州のパシフィックグローブで開催されました。29th FGCは参加者約900名、計6日間にわたる世界最大規模の真菌遺伝学学会です。私は両学会においてポスター発表を、29th FGCにおいては口頭発表も行いました。
 開催地のパシフィックグローブは、ロサンゼルスから北に約500 kmのモンテレー半島に位置する太平洋に面した町です。3月中旬ながら日中は暖かく、時々曇り空が広がるものの学会期間中は好天に恵まれました。学会会場となったAsilomar Conference Groundは歴史的建造物が多数現存しており、また眼前には砂浜が広がる海風がとても心地よいところでした。近隣には米国で有名なモンテレー湾水族館があり、学会期間中に足を運びました。
 29th FGCは真菌の様々な生命現象を研究課題とする研究者が一堂に会し、朝から夜遅くまで議論を重ねる場所でした。学会中の一日のスケジュールは、大変魅力あるものでした。午前中には全分野の研究者を集めた口頭発表が行われます。ランチを挟んで午後からは複数のセッションに分かれてより専門的な分野に特化した口頭発表が行われました。さらにディナーの後、ワインやビールを飲みながらポスター発表が行われ、夜10時半まで研究者同士がとてもフランクに議論していました。また、Asperfest14は真菌の研究者のうちAspergillus属の糸状菌を扱う研究者を集めた、29th FGCのサテライトミーティングとして開催されました。
 私は、糸状菌のモデル生物であるAspergillus nidulansを用いて、糸状菌の細胞壁成分の一つであるα-1,3-グルカンの生物学的機能に関する研究を進めています。この度の学会でも「Comparative analysis of the function of α-1,3-glucan synthases, AgsA and AgsB, in Aspergillus nidulans」というテーマで発表を行いました。私にとって初めての国際学会発表となったAsperfest14のポスター発表では、多数の研究者から質問・意見をいただくことができました。拙い英語話者である私の発表を英語力関係なく聞いてくださった方がたくさんいらしたことが印象的でした。本会である29th FGCのポスター発表でも、世界の研究者とたくさんの議論を交わすことができました。特に、α-1,3-グルカンに詳しいドイツ人の研究者と、お互いの研究内容や将来の研究方針について長時間にわたり意見交換ができたことは貴重な経験となりました。
 29th FGCの最終日には、本学会の大一番である口頭発表を行いました。私にとって英語の口頭発表は非常に難易度の高いものであり、渡米前から入念に準備をして発表に臨みました。本番の15分間の発表の中では、躓く箇所はあったものの、何とか最後まで話しきることができました。しかしながら、発表時間の超過や質疑応答の不備など、至らない点がたくさんありました。このような課題は残ったものの、会場の独特な雰囲気や英語での口頭発表の緊張感など、実際に体験しなければ感じ得ないことを修士二年の段階で経験できたことは、これからの研究生活において大変意味のあるものとなったと感じています。
 最後になりましたが、本学会発表にあたり、助成金を交付してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この度の学会参加を通して得た知見・課題を今後の更なる研究活動の発展に生かせるよう、より一層精進して参る所存です。

29th Fungal Genetics Conference
および14th International Aspergillus Meeting参加報告

東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 遺伝子情報システム学分野
      博士課程前期2年
井上 大志

 私は、2016年3月13日から19日にかけて、アメリカ、カリフォルニア州のパシフィック・グローブで開催された、29th Fungal Genetics Conference(FGC 29)および14th International Aspergillus Meeting(Asperfest 14)に参加し、両会議でポスターセッションによる発表を行いました。FGC 29は、一般的に酵母やカビ、キノコと呼ばれるような、真菌類の生物学に関する国際会議であり、Asperfest 14は、真菌類の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを研究対象とした研究者が集まる会議でした。会場となったパシフィック・グローブは、太平洋に面した半島に位置し、豊かな自然に囲まれたリゾート地でした。涼しく、湿気の少ない気候で、会場のすぐ近くには白い砂浜が広がるビーチもあり、学会中は開放的な気分で気持ち良く過ごすことができました。
 ポスター発表では、Aspergillus属カビの遺伝子発現制御機構に関する研究を報告しました。初めての国際学会での発表ということもあり、英語で自分の伝えたいことを説明することには正直苦労してしまいました。特に、せっかく興味を持って質問してくれた方に対しても、質問の意図を把握できず、適切に回答できなかったことは反省すべき点でした。自身の公表する研究成果は、世界中の様々な研究者に正しく知ってもらい、役立ててもらうことで初めて有意義なものになると思います。そのため、今回の国際学会で発表させてもらったことは、英語でのコミュニケーション能力の重要性を実感するいい機会となりました。一方本学会は、他の真菌類の様々な生命現象に関する研究について勉強する有意義な時間となりました。自分の専門分野と近い分野に関しては、日頃研究を進める上で参考にしている論文著者のグループの最先端の報告を聞き、実際に質問してディスカッションする中で、世界の様々な場所で研究が進められていることを感じ取ることができました。また、自分が研究対象としていない種類の真菌類や、分野が大きく異なる研究内容もおおまかに把握することもでき、真菌類の生命現象に対する視野も広げられたと思います。特に、Neurospora属のカビを研究対象としたエピジェネティクスと転写制御に関する研究はとても興味深く、今後の研究方針を考える上でも非常に参考となりました。
 本学会では、研究に関することだけでなく、初めて本格的に国際交流を経験した機会にもなりました。学会期間中は、本学会に一緒に参加した同研究科に所属する宮澤君と、ドイツと韓国から参加したドクターコースの学生の方、計4人で一週間宿泊しました。二人とも、私のつたない英語を根気よく聞き取ってくれて、コミュニケーションを取ってくれました。研究の話はもちろん、お互いの文化や食べ物についても話したり、食事を共にしたり、一緒にビーチを散歩したりと楽しく過ごすことができました。文化や言語の違いがある一方、生物の科学という共通の興味を持った人と交流できたことは、今後研究に取り組む上でのモチベーションにも繋がったと思います。また、たまたま昼食の席で隣になった、海外の大学でポスドクとして研究されている日本人の方とも知り合うことができました。海外での研究活動の経験についてお話して頂いたり、研究活動についてもアドバイスを頂いたりと、自分の将来を考える上でも貴重なお話しを聞かせていただきました。
 今回の海外出張で、専門分野に対する理解が一層深まり、今後の研究の発展も期待できるような着想や人間関係を得ることができました。また、日本では得られないような貴重な経験もすることができました。この経験を、さらによりよい研究につなげられるよう、これから日々精進して参ります。最後になりますが、今回の国際学会に参加するに当たり、渡航費を助成して頂いた公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

2016 XXV International Congress of Entomology参加の報告書

東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 生物制御機能学分野
      博士課程前期2年
小野寺 駿

 私は、9月25日から30日にかけてアメリカ合衆国フロリダ州にて開催された第25回国際昆虫学会2016 XXV International Congress of Entomology(ICE2016)に参加いたしました。ICEは、昆虫に関する研究者が世界中から集まるため、今回もすべての講演数が1,000を超える非常に大きな学会となりました。
 私はポスター発表でプレゼンテーションを行いました。国際会議への参加は今回が初めてであったので、非常に緊張しました。外国人研究者の方から何度か質問を受けましたが、英語での質問内容を理解してスムーズに返答することに苦戦しました。初めて国際学会に参加したことで、外国人研究者の方々と英語でコミュニケーションをとることの難しさを実感しました。それでも、何度も質問して下さる方や、次はどのようなデータを取るのがよいかをアドバイスして下さる方がおり、自身の研究に興味を持ってもらえたと感じるとともに、世界中の方々と意見交換を行うことができることをうれしく感じました。今回のICEでのポスター発表は良い刺激となり、非常に有意義な経験となったと思います。
 他の方々の講演発表では、私の研究テーマである青色光の殺虫効果と近いテーマの発表はありませんでした。世界で初めて確認された現象に関する研究であるため、仕方なかったのですが、それでも世界中の最先端の研究に関する発表をいくつも聴くことができ、今後の研究にも活かすことができそうだと思いました。また、昆虫に関する研究者が世界中から集まったためか、中には昆虫と文化を絡めた研究発表もあり、国内ではまず聴けないような講演もあって、非常に新鮮で興味深く感じました。このように、今回の学会は多様な分野の研究発表を聴く機会が多かったので、英語の聞き取りや理解ができなかったことも多かったのですが、自身の英語能力を高める必要性を強く感じました。また、研究を進めるうえで、あらゆる分野からのアプローチが重要であると改めて感じ、今回の学会で聴いた数々の講演は良い刺激となったと思います。
 最後に、今回助成金を交付して下さいました財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。大規模な国際会議に参加できたことは、たいへん貴重で有意義な経験になりました。学会では外国人研究者の方々とコミュニケーションをとることができ、最先端の研究に触れることもできたので、自身の研究を進めるうえでのヒントを得られただけでなく、研究に対するモチベーションを上げることにもつながりました。今後はこの学会で得られた知識を活かしてより一層研究に打ち込みたいと思います。このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。