母子移行免疫の機能形成

乳腺免疫の不思議に迫る ~哺育の質向上による子の健全育成への挑戦~

 哺乳動物における哺育は、種の繁栄に欠かせません。母乳中に含まれる抗体は、免疫機能が脆弱な幼若期の子に移行される、母体由来の重要な免疫物質です。哺育を介して、子に十分な母乳中抗体が移行されることは、幼若期の子が健全に育成する上で必要不可欠です。我々は、母体がこの母乳中抗体をどのように作り上げているのか、その答えを知るための「乳腺免疫」に関する研究に力を注いでおります。乳腺は、授乳期という限られた時期にのみ発達する腺組織(外分泌腺)であり、授乳期以外の時期に母乳中抗体が作られることはありません。つまりは、母は生まれたばかりの子に自らの免疫を授けるべく、授乳期特有の生命現象である「乳腺免疫」を発達させているわけです。抗体は、形質細胞と呼ばれるB細胞(リンパ球の一つ)から分化した細胞のみが作ることのできるタンパク質です。授乳期の乳腺には、非常に多くの形質細胞が呼び寄せられ、母乳中抗体を分泌しています。そして、形質細胞は離乳とともに乳腺から姿を消します。母の体内で、形質細胞はどこからどのように乳腺組織に移動してくるのか、それは、授乳中の母体が有する最大の免疫ミステリーです。

 我々は、「乳腺免疫」に関する研究を通して、母乳中抗体に着目した哺育の質向上を可能にするための免疫ストラテジーの構築を目指しています。「哺育を介して十分量の抗体を子に移行させるためには何が必要か?」、この謎を解き明かすことが、我々に課せられた使命です。我々はこの「乳腺免疫」に関する研究を通して、畜産学/獣医学はもちろんのこと、医学/歯学/薬学といったヒトを対象とした学問領域にも貢献したいと考えています。

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