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葛尾村エクステンション・稲刈りツアーを行いました
- 2020年12月17日
【9月19日に葛尾村エクステンションツアーを行いました。】
9月19日(土)に、葛尾村を含む福島県内の見学ツアーを行いました。仙台から留学生を含む学生・一般参加者32名が参加しました。
今年度は新型コロナウイルス感染防止のため復興農学は中止となり、5月に予定していた田植えツアーも行うことができませんでした。それもあってか、今ツアーでは農学研究科の学生の他、過年度マイスター、留学生、他研究科学生など幅広い方にご参加いただきました。
今回は、郡山市の福島県農業総合センターや浪江町の大平山霊園・請戸小学校跡地、そして葛尾村の植物工場、おふくろフーズさん、牛屋さん(2社は選択制)を見学する盛りだくさんのツアーでした。
福島県農業総合センターは、ツアーや実習で伺うのは初めての見学先で、農水産物に関する安定供給やブランドの確立、6次化の推進等の研究の拠点となるセンターです。品種開発も行っており、昨年2019年もコメのオリジナル品種ができたばかりです。国内外からの見学が多く、海外の政府関係者からの見学後に福島の農産物の輸入規制が解除されるなど、重要な役割を担っているそうです。

写真:福島県農業総合センターで話を伺う参加者
今回は感染防止のため参加者にマイクは回しませんでしたが、葛尾村復興交流館「あぜりあ」までの道中はいつもお世話になっている葛尾村づくり公社の松本松男さんにお願いしました。震災当時の葛尾村民の避難指示や避難先での生活について、そして葛尾村にいるからこそ分かる年々の復興状況や変化をお話しいただきました。
葛尾村では4班に組み分けし、それぞれ見学しました。名産品のしみ餅を製造する(有)ふるさとのおふくろフーズでは、震災後に製造したしみ餅は放射線量の数値は問題なかったものの風評被害ですべて破棄することになったという悔しさをお話しいただきました。震災後は放射能汚染の風評被害を防ぐために山のごんぼっぱは利用せず、畑で自家栽培しているそうです。
㈱牛屋さんは昨年の復興農学フィールド実習以来の訪問です。牛の避難対応や帰村後の立て直しで苦労された過程のほか、現在展開している高級羊肉のための新規事業の説明を受けた後に食肉用の牛と羊の肥育現場を見学させていただきました。新型コロナの影響で外食産業の経営が苦しい中でも需要は高く、和牛の肥育で培った技術をラム肉生産に活かしていることが高い品質につながっているとのことです。

写真:牛屋さん施設見学中の参加者
すべての班が見学した植物工場では、加藤先生が地域復興実用化事業について、栽培中のマンゴー・トマトについて説明いただきました。また、現在収穫期を迎えるマンゴーの試食もふるまわれました。
午後の浪江町の見学では、浪江まちづくり公社の方にバス内と現地でのガイドをお願いしました。大平山霊園は、東日本大震災で流失した墓地の代わりに高台に建てられた町営墓地です。請戸小学校跡地では、敷地外から校舎の様子を見学し、震災当時の請戸小学校の児童の避難の様子をお話しいただきました。また、高台から海岸に向かってかつて多くの農地と家々が広がっていたそうですが、現在はその面影はなく、津波被災の影響が強く感じられました。

写真:請戸小学校跡地前で震災当時の話を聞く参加者
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
【10月3日 葛尾村東北大学圃場で稲刈りを行いました】
10月3日(土)、福島県双葉郡葛尾村にある東北大学の田んぼで稲刈りを行いました。仙台から留学生を含む学生・一般参加者16名が参加しました。今回はコンバインの乗車体験と手刈りの体験を行いました。
この日は田んぼの管理をしてくださっている松本操さんと松本秀夫さんにご協力いただき、参加者が順番にコンバイン運転を体験させていただきました。参加者全員がコンバインに乗るのは初めてということで、中には緊張していた人もいたようでしたが、そばに操さんがついて指導してくれたこともあり、まっすぐきれいに稲を刈ることができました。また、手刈り体験は、稲の束をわらでくくるのに苦戦していた人もいました。秀夫さんに指導いただきながら、「はせがけ」(宮城では「はさがけ」)の桁に稲束をかけました。

写真:コンバイン乗車体験と手刈り体験をする参加者
稲刈り後は、千歯こきを使った脱穀方法の体験を行いました。農作業機械がないころに行われていた脱穀方法で、すべてを手作業で行う重労働を知り、参加者の皆さんは農作業機械の便利さを実感されたのではないでしょうか。

午後は葛尾村教育委員会の上遠野さんが葛尾村伝習館と磯前神社のガイドをしてくださいました。葛尾村は小さな村ではありますが、個性的な歴史や文化があることをユーモアを交えながら紹介してくださいました。

写真:葛尾村教育委員会の上遠野さんより伝習館の展示物についてガイドをうけている様子。
葛尾村は、2011年3月の東日本大震災によって発生した東京電力福島第一原発事故の影響により、5年間の全村避難を経験しました。震災からもうすぐ10年ですが、村東部にはまだ避難指示が解除されていない帰還困難区域も存在します。村中心部の避難指示解除から4年が経ちましたが、帰還した村民は3割程度です。人口減少、農業の担い手不足、風評被害など未だ難しい課題はありますが、戻った村民が自分らしくいきいきと生活できるように、私たちも協力できることを模索していきたいと考えています。