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吉原 佑助教(生態適応復興科学グループ)が、宮城県岩沼市において緬羊放牧を用いた除草試験「除草と心の復興のための竹柵ヒツジ放牧」を行いました。
- 2016年2月17日
除草と心の復興のための竹柵ヒツジ放牧
1. はじめに
東日本大震災からまもなく5年が経過しようとしているにもかかわらず、津波の被害を受けた仙台平野沿岸地域の多くはいまだに利用が定まっていない。このような未利用地では雑草が繁茂し、景観の悪化と除草費用の負担が復興の妨げとなっていることから(写真1)、復興庁、岩沼市、青年海外協力協会と東北大学復興農学センターの協力の下で、宮城県岩沼市の二野倉地区において緬羊放牧を用いた除草試験を行った。

(写真1)宮城県岩沼市の津波被災地の状況
2. 竹を使った手作り牧柵
この試験で使用した牧柵は、市内の竹を利用し、地域住民に手伝ってもらって手作りした(写真2)。結果、低コストのうえ景観に調和する柵を設置することができた。また、鉄製の柵と比較して、竹柵は強度が心配されたが、 1ヵ月の放牧で牧柵の破壊もなく脱柵も発生しなかった。

(写真2)完成した放牧試験用の竹製牧柵
3. 放牧による除草防除の効果
放牧前に植物の刈り取り調査を行ったところ、 牧柵内に生草でカワラヨモギ950g/㎡、セイタカアワダチソウ20g/㎡、イネ科雑草10g/㎡が確認された(写真3)。
11月の東北地方であったのでヨモギは枯れて木化し、口をつけてくれないのではと危惧していたが、放牧12日後にはそれぞれ490、10、0g/㎡に減少していた(写真4)。従って、牧柵内に雑草392kgあったのが、200kgにまて減少したことになり、緬羊一頭当たり1日平均で生草約8kg重の雑草を食べたことになる。

(写真3)放牧前の実験柵の植生

(写真4)放牧後の実験柵の植生。写真3と同じ位置から撮影している。
4. ヒツジの健康状態
今回放牧用に導入したヒツジは東北大学の農場で生まれ、舎飼い中心で飼養されていた(写真5)。舎飼いで牧草を給与していたため、11月の枯れた雑草のみでの放牧飼養で健康状態が心配されたが、放牧中にヒツジの健康問題は発生しなかった。
今回放牧用に導入したヒツジは東北大学の農場で生まれ、舎飼い中心で飼養されていた(写真5)。舎飼いで牧草を給与していたため、11月の枯れた雑草のみでの放牧飼養で健康状態が心配されたが、放牧中にヒツジの健康問題は発生しなかった。

(写真5)試験柵内で草を食べる緬羊
5. 今後について
今回は緬羊2頭のみの限られた放牧試験であったが、想像以上の除草効果を確認することができた。今回の成功を踏まえて、より一層の除草効果を狙って来年には放牧地、放牧頭数を増やした本試験を検討している。
そして、今回の試験においてヒツジを用いたのは除草のみを目的としたものではなく、動物とのふれあい(アニマルセラピー)によって、被災者に心の復興をもたらすのではないかという期待があった。また、近隣の小学校等ではヒツジの飼育や食肉を通して子供に対する生命の尊厳、責任感の醸成や食育等の教育効果にも期待している。